ばいばい

大切に、大切に

ゆっくり、ゆっくり

築いてきたの

 

一歩一歩。

 

 

喜びが増えて、幸福になって、安らいだ。

 

 

ひとつひとつ。

 

 

自分のことを教えて

あなたのことを教えてもらって

 

大切だった。

 

 

とてもとても特別で、一つだけだった。

 

 

 

そーっとそーっと。

 

 

積み重ねてきた。

 

 

 

 

 

わからないよ、どうしてかな

 

たくさんの時間をかけて

丁寧に丁寧に積んでたよね。

 

それなのに。

 

 

 

 

 

 

たったひとつで、崩れたんだ。

 

わたしにはその音が聞こえたよ。

 

 

 

 

 

 

どれくらい崩れた

 

何が残ってる

 

残ってるものは黒くなってきたよ

 

 

 

 

崩れていった。

 

過去の時間は空洞になり

 

なにも残さない。

 

 

 

 

 

 

 

何もなかったんだ

 

 

さいしょから

 

 

わたしなんて、からっぽだったじゃない

 

 

 

 

 

 

 

 

汽水湖

 

知りたくて、もっと、あなたのこと

だけどなんて聞いたらいいか、わからなくて

 

「あなたの町には海はありますか」

なんでもよかった

あなたに触れることならなんでも

私は海を見るのが好きです

あなたの町には海はありますか

 

あなたはわたしの知らない言葉

たくさん知ってた

「キスイコもあるよ、意味は自分で調べてね」

 

知りたくて、もっと、あなたのこと

すぐに調べたよ キスイコ、キスイコ

 

 

あなたの町にはなにがありますか

犬と猫はどっちが好き?

好きな小説を教えてください

あなたはどんな町で生まれましたか

 

あからさまなことは聞けなくて

子どもみたいなことばかり聞くわたしに

ぜんぶ、教えてくれた

 

 

 

海と湖の混ざったところ

あなたの子供時代

 

想像して胸がいっぱいになる

 

苦しいくらいに押し寄せる波

必死に、息するわたし

 

 

 

 

ひどい日

 

 

眠れなくてだけどゆめうつつで

濁った眼を開けたり閉じたり

 

こころが音を立てて壊れるのがわかる

本当に鳴るんだ

ガラガラガラガラって

 

 

 

ああああ。

 

 

冷たくて熱くてどうしようもない

真っ暗で眩しくて

もう もう。

 

 

 

 

助けてくれないで。

こっちを見ないで。

ひとりなんだ。

 

 

 

 

 

壊れた心はもう

元には戻らない。

 

そうやってだんだん減っていくんだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

かけがえのないもの

 

失ったら おわりなの

 

なくなったら、もう、ない

 

 

 

あなたと出会ったとき

一緒に生まれたわたしは

 

あなたを失ったとき

いっしょに死ぬ

 

 

 

 

失うことはこわくないよ

こわくない

 

自分もいっしょに手放すだけ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

失いたくない いなくならないで